2010年3月22日、NHK総合テレビ 午後10時~11時30分放送。 放送記念日特集 激震マスメディア~テレビ・新聞の未来~ 出演 キャスター:藤沢秀敏解説委員長 黒崎めぐみアナウンサー ゲスト:日本新聞協会会長 内山斉 日本民間放送連盟会長 広瀬道貞 ドワンゴ会長 川上量生 ITジャーナリスト 佐々木俊尚 学習院大学教授 遠藤薫 NHK副会長 今井義典 * あまりにも広瀬道貞さんの話がギャグみたいで面白すぎて、書き起こしながら笑ってしまった。 こんなギャグとまじめに付き合わなくてはいけないテレビ朝日関係者には同情を禁じえない。 * 司会のキャスターの発言はかなりは要旨が分かる程度に端折ってあります。 ゲストのコメントはなるべく正確に記しているつもりですが、語尾や言葉遣いは変えてある部分があります。 すべての正確性は担保しませんので、必要なら各自で確かめてください。 * 映像:広告代理店勤務31歳。テレビを見ない。ネットで済む。 司会:「冒頭のVTRをどう見たか。一言ずつ感想を」 内山:「新聞とテレビの新たな存在感を示す時代を迎えたんじゃないかな。」 司会:「新聞を読まない、テレビを見ないという人が増えてることに危機感を覚えないか」 内山:「だからこそ、新たな時代、あとでどうしたらいいかと言うことを申し上げたい」 広瀬:「大変な時代になったことはよく分かるけれども、もしテレビや新聞の存在感がなくなったらなば、この国の民主主義とか、国民の暮らしの安全だとか、そういうのがおかしくなってくる。ここはしっかりしなくちゃならないと感じた」 川上:「VTRでもあったが、今、ネットを使っている人はテレビとか新聞とかの時間が減っているのではなくて、まったく見ない。それを今日、力説しようと思ってきたけれど、既にvtrで言われてしまったので、どうしようと」 司会:「その背景などをうかがいます」 佐々木:「基本的には新聞もテレビも日本人にとって最も良きメディア空間であるという存在ではなくなってしまった。なぜそうなってしまったのか。あるいはその先にどういう新しいメディア空間が待っているのか。という展望的な議論ができればと期待している。」 遠藤:「私はちょっと緩やかなことを考えていたけれど、昨日あることがあって、昨年の政権交代に続いてメディア交代が起きるのではないかと思っている」 司会:「緩やかなことを考えていらっしゃったというのはどういうこと」 遠藤:「もうちょっと転換が2・3年はかかると考えていた、でも、もしかするともっとドラスティックな変化が起きるかもしれない」 今井:「今のビデオを見ながら来年の7月24日テレビは完全にデジタル化するということを考えると、正直身の引き締まる思いがする。新しいプラットホームに、放送と通信がいっしょに上っていく時代が始まる。さあ、どうとりくむか。大変な時代だと思う」 司会:「感想は立場によって様々だが、共通しているのはマスメディアが激動の時代に入っているとことではないかと思う。今日は、皆さんと率直で建設的な議論を進めていきたいと思います」 司会:「テレビを見ている人の意見も受け付けます。番組内でもできるだけ紹介する」 司会:「マスメディアの世界で何が起きているのか。メディア先進国と言われるアメリカの現状をご覧いただく」 映像: ロッキー・マウンテン・ニュースの廃刊。アメリカで100以上の新聞廃刊。ネットニュースの台頭。自分たちで取材をしないストレートニュースサイトの登場。広告費の減少。テレビの視聴者ばなれ、10年で700万人。独自の番組制作を放棄する地方テレビ局。3大ネットでもリストラ計画。 司会:「アメリカではマスメディアの危機は社会の危機だ、さっき広瀬さんがおっしゃったように民主主義の危機だという見方もある。去年連邦議会で公聴会が開かれて、経営難に陥った新聞社に対して公的支援をするかどうかといった議論まで起きている。この新聞などマスメディアの衰退というのは、社会にとっても深刻な事態と受け止められている。」 司会2:「そうですね。そして日本の状況はどうなのか、ツイッターの皆さんのご意見をみていたが、アメリカではなくニッポンの現状を知りたいというご意見もありましたので、まずお応えしてまいりましょう。まずは新聞の発行部数です。徐々に減少してるのがわかります。特におととしから去年にかけて100万部以上減少している。そしてテレビです。テレビの週刊接触者率というのは、1週間に5分以上テレビを見た人の割合。国民全体では9割以上になるが、20代では100人の内12人は1週間の内テレビを見ている時間が5分未満ということになる。そして、広告費です。テレビと新聞は緩やかに落ちているが、インターネットの広告費、去年は新聞を抜いた。」 司会:「本格的な議論を始めたい。まず、日本のマスメディアの現状をどうごらんになるか」 佐々木:「ものすごく簡単な情報の需要と供給に関する市場原理みたいなもの。今まで情報はマスメディアが独占していた、だからみんなが情報を知りたいのだけれど、マスメディアにしか情報がなかった、つまりそこで供給が絞られていた。これがある意味、マスメディアに対する人々の情報の飢餓感を招き、一方、マスメディアに余剰の富が流れ込む、そういうモデルだった。ところが、インターネットの出現によって完全にその需給バランスがくずれてしまった。膨大な数の情報が流れ込むことによって供給が増えてしまった。そうすると需要を満たす以上の情報があるということは当然、需要を供給する側の富そのものも減っていく。これはごくあたりまえのこと。もう1点大事なのは、こういうことを話しをすると、じゃあその情報はいったいどこからくるのかと、新聞やテレビが流しているのを単にネットではコピーしているだけじゃないんですかという意見があるが、実は今起きていることはそうではない。つまり、たとえば、政権交代がありいろいろなニュースが起きると新聞やテレビはもちろん、それについて一次情報を流す。その情報に対してネットの側ではものすごい膨大な数の言論が、それについてどういう意味付けを行うのか、どう考えるのか、どう評価すべきなのか、分析論考がものすごい勢いで行われている。そういうものの全体の総体としての情報量が増えているということ。つまり、今までだったらマスメディアの1次情報しか読めなかった、それに対するどういう風にニュースを評価するかまで含めて、情報量が全体として莫大な量になってきている。と言う中では、同然マスメディアが持っていた役割の部分というのは減少していくのはしょうがないということだと思う。だから、僕はこの状況と言うのは、おそらく後戻りは絶対しないのではないかと考えている」 内山:「アメリカと日本じゃちょっと新聞の構造が違う。まずアメリカでは150年の歴史の新聞がつぶれちゃったといいますが、日本では日本語の新聞ができて来年で140年、やっとそういう状況です。さて、どう違うかと言うと、日本では宅配制度、家庭に新聞が配られているのが、だいたい95%。アメリカではだいたい75%、フランスなどは29%なんです。ですから、買いに行かなきゃない。去年公益、財団法人の新聞通信調査会というところが世論調査を行い、新聞について。83%のかたが、戸別配達を続けてほしいという要望をしているという、違いが一つあります。それから、収入構造ですね。アメリカの場合はだいたい、8割が広告です。日本の場合はだいたい3割くらいです。アメリカでは新聞が1400ある。1社平均の販売発行部数は4万部です。日本の場合は10倍以上の62万部と。そういう違いがあるという。これが現状です」 広瀬:「テレビの場合、人々のテレビ視聴時間、これは1980年代、一番テレビの盛んなころ、23・40分、1日、だったが、今もほとんど変わっていない。それから、そう視聴率、という数字、みんなが見ている、視聴率はどうかという、これもほとんど変わっていない。で、確かに、先ほど出ていたように広告費、広告収入と言うのは、ここ2年ほど、下がってきております。ただし、そのことからみますと、テレビの存在感と実際の収益のところとは別物だと考えた方がいい。メディアの専門家のみなさんは、アメリカではああいう劇的なことが起きているという、おそらく5年とか10年後とかには日本でも起きるだろうと、こう見ているのだけれど、先ほど申しましたように、20年近くテレビとの接触率は変わっていないということは、日本はいったいどうなっているのだろうと、日本とアメリカ、あるいはヨーロッパとどう違うんだろうと、そこを考えてもらいたいと思うんですね。私論ですけれども、今新聞は宅配と言ういわば新聞のインフラがしっかりとしているということは、ありました。テレビも同じであって、地上波テレビと言うのはですね、ホントに全国津々浦々まで電波が通ります。今回のデジタル化も山の中、海岸側、50戸、100戸と言うことろまで届かせるには、大変なお金をかけている。で、そういうところにはインターネットもいかない、場合によっては新聞もいかない、携帯電話も、そもそも用事の時しかかけないという具合で、そういうところでテレビ離れというのが起こるというはずないんです。今後、番組をしっかりしていく、あるいは、CMについても効果のあるものを工夫していく、そういうことで存在感を示していけると、私はそう思っている。日本と欧米とではテレビの事情がそうとう違うなと、そういうことが大事だなと」 司会:「日本とアメリカとは制度とか、ビジネスモデル的なものが違うということですけれど、いまの経営が厳しい状況は、景気が回復すれば、一時的には好転するかもしれないけれども、長期的にはどうか。佐々木さんは構造的な変化が起きていると、需給の関係ががらっと変わっているという話だけども」 内山:「テレビの場合を先に言うと、確かに2001年にITバブルが崩壊します。そのあとずっと10年間は、いまがそうなんですけど、ほとんど1%上がったり1%さがったりと言う具合でほとんど平準利益でいっています。時代がたち、全体の文化水準が上がったのに、なんで上がらないのかと言う疑問はあるが、とにかく、大きく下がることはない。しかし、リーマンブラザーズ以来下がったところは、まだもちなおしていない。それにちょうどデジタル投資が大変な重荷になってきた。それで収支が悪くなって、201社、民間放送局があるが、おそらく2009年度3月期の決算だと、半数前後が赤字になりそうだと。つまり、私は今の経営の不本意な姿は極めて循環的なもの、景気に左右されたものだと風に思う」 司会:「受信料で成り立っているNHKの立場からどう考えるか」 今井:「社会的な傾向でいえば、もう人口の減少が始まっている。高齢化が進んでいる。NHKでいえば接触者率の全国調査でていましたが、NHKだけでいえば、NHKに全く接触しない人は24%いる。やはり、全体的な傾向の中で、受信料で放送を出していく、受信料で社会の公共空間を創っていく、という役割を維持していくためには、我々はもっと自己革新を遂げなくてはならない。昨日のとおり今日やっていけばいい、今日のとおり明日もつづくだろうと、そう考えるのは間違いだ。」 司会:「若い世代の新聞テレビ離れが進んでいる理由をどうみるか。既存のマスコミが若い世代を惹きつけるコンテンツを出していないということなのか、メディアへの接触の仕方が、技術面の進展もあって根本的に変わってきているということなのか」 川上:「理由はいろいろあると思う。まず、実際に本当に若い人はテレビを見る人はすごく減っている。われわれのニコニコ動画の例を紹介すると、1日200万人のユニークユーザーが、ログインするサイトなんですが、平均利用時間が1時間。一見で帰ってしまうお客さんもいるので、そういう人を除いてみると、1日2時間私達のサイトを利用している。こう云う人はテレビを見ていない。見る時間がないからです。ここまでネットを使っていると、人間の24時間というのは同じですので、そうするとネットの方に時間を吸い取られてしまっている人は、確実にテレビを見ない。それは我々のサイトだけでも1日200万人いる。僕は構造的な変化が起きていると思う。」 司会:「若者にとって新聞テレビはどんな存在か」 遠藤:「若者の話もあるが、さきほどドラスティックに変わるのではないかと申し上げのは、昨日研究者仲間としゃべっていて、40代のリベラルな知識人を自称する人、その方はいままで新聞のコアな読者層を形成していたと思うが、その彼が、僕はもう新聞やめた、やめてみたらなんでもなかったと、こう云う風に言ったんです。そういういいかたというのは、2009年の総選挙の前に、80代の知人でずっと自民党の強固な支持層であった、彼がぽつっと、もう自民党はやめたと言ったのと非常に感覚が似ていた。つまり、若年層の動きもそうですが、コアな部分で崩れ始めると、これは大きな変化が起きるのではないかという風に思う。若年層に話を戻すと、若年層は見ていません。それも、ここ数年急激に起きている。従来だと、講義の最初につかみでテレビドラマやCMの話をして引きつけようと努力してみたりしようとするが、これがぜんぜん効かなくなってしまった。みんなバラバラなものだから、いってもわからない、きょとんとして。新聞はもっと悲惨な状態。すいません。ただし、さきほどおっしゃったように、接触者率とか視聴率は意外なほど下がっていない。また、世界の中で日本は非常にがくっと新聞やテレビに対する信頼が高い。これは確かです。しかし、それで安心していられるかと言うと、そうはいかなくて、つまり接触者率が高い、資料率が必ずしも下がっていない、しかし、その中身はどうだろうと、そういうことを考えると、非常に視聴の質が下がっている、つまり、テレビはつけっぱなしになっている。そこのところも接触者率にカウントされてしまう。しかし、信頼度、新聞テレビに関しては完全に年齢と比例して信頼度が高い。しかし若年層になると下って、20代ではインターネットが一番信頼されている、当結果が出ている。これは一時的なものではなくて、非常に長期的にこういう傾向が出ている。また当然のことながらアメリカでは同じことが起きている。ということは、けっしてアメリカと日本とが無縁の状態にあるのではない。そう考えられる。」 続き→激震マスメディア~テレビ・新聞の未来~、広瀬道貞75歳の今。その2
by sleepless_night
| 2010-03-28 10:13
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