“ある支援者から国語の教員になりたいという学生がいるので、面倒をみてくれないかとの陳情を受けた。学生は運良く教員採用試験にも合格し、わが先生の紹介を受けて晴れて教員に内定。さっそく長崎屋のカステラだったかをぶら下げて、事務所にお礼にやってきたりもした。 と、ここまではよかったのだが、それからしばらくして当の学生が真剣な顔をして、再び事務所にやってきた。「どうしても単位が取れなくて、卒業できない」というのである。教員免許は卒業証明書と同時に発行される。当たり前の話だが卒業は最低条件だ。そこで、 「困った奴だ、いったい何の単位がとれないんだ」 と聞くと、国語教育法だという。こいつはあきれた学生だ。国語の先生になろうという者が国語教育の単位が取れないというのだから…。さすがに腹が立った私は、 「英語やら数学の単位が取れないというんならわかるが、国語がダメというのはどういうことだ。そんなことは自分でなんとかしろっ!!」 と怒鳴りつけてはみたものの、有力な支援者からの依頼ということになると無下に扱うわけにもいかない。結局、私が大学に説明に出向いて、なんとかかんとか卒業の基準を満たすよう、拝み倒したのだった。 それにしても、国語教育法の単位も満足に取れないで国語の先生になったんだから、教わるほうの生徒はたまったものではありませんな。私にしてもこの件を思い出すと、その学校の生徒たちのことに思いがいたり、いまだに良心がチクチク痛んでいけない。だって、この先生から通知表で5をもらっても、本当に実力があるのか、わかったものではないんですから。” 『代議士秘書』講談社文庫 飯島勲(小泉純一郎 政策担当秘書)著
by sleepless_night
| 2006-11-29 00:58
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