前回、「意味」「目的」には二つの用法があって、その混用は悪用されることがあると述べました。また、私達が日常で使うのは②の用法が多いことも述べました。
さて、前回は何かに失敗したり病気になったり等の場合を例に話をしましたが、今回は逆の場合について述べたいと思います。 ②の用法での「意味」「目的」は、自分の人生へのコントロール力や意図した結果への影響力を喪失した場合に言う「意味が無かった」や「目的が失われた」の「意味」「目的」ですが、仕事が上手くいったり、試験に合格したりしたときにもこの「意味」「目的」への疑念が生じることがあります。 つまり、虚しさです。 自分の人生をコントロールでき、意図した結果へ影響力を発揮できると通常は「目的」に自信を感じたり「意味」があったと思うのですが、反対に虚しくなる時もあります。 それは、自分が有限であることから来る虚しさです。 どれ程のことを成し遂げてもやがては死を迎えます、さらには、この地球自体も終わりがあると考えられています。そこまで考えなくとも、自分が為したことが意外と小さく感じることはあるでしょう。 そこで、確かに①の用法での「意味」「目的」が登場する余地があります。 偉大な宗教家が提唱し、それについて多くの先人が考えを重ねてきた知恵が、その虚しさを解決してくれる余地はあります。 但し、いきなり①の用法へと飛躍することも実はありません。 と言うのは、このような場合は①も②も似ている要素が解決に寄与すると考えられるからです。 つまり、①の用法で「意味」「目的」があると感じる場合も、②の用法で「意味」「目的」があると感じる場合も、ともに活動による充実感が大きな要素を持つと考えるのです。 違うのは、①の用法での「意味」「目的」には抽象性や普遍性を備えたものが多いので、有限性や小ささを感じさせることが少ないという点です。 仕事に力を入れ成功したときも、勉強をして試験に受かったときも「目的」に「意味」があったと感じるでしょう。(②の用法) 隣人愛を実践するために近所の老人の病院の送り迎えをしたときも、行施をしようとお寺の掃除をしても、新しい信者を獲得するために活動しても「目的」に「意味」があったと感じるでしょう。(①の用法)<※> どちらとも共通しているのは「目的」に「意味」があったと感じる基本に充実感があるということです。 ですから、今まで、①の用法での「意味」「目的」に触れてこなかった人(宗教思想などに触れて事無かった人)が突然に受け入れようとする必要もないと言えるのです。 ②の用法での「意味」「目的」でも、今まで自分を中心にしてきたものを、他人との関係へと意識を向けてみるだけでもだいぶ変化があると思います。(ここで注意して欲しいのは、“他人へ”ではなく“他人との関係へ”です。他人中心にはできませんから、自分と他人という関係から充実感を感じられるように注意を向けてみるということです) そうすれば、仕事で自分が成功する(出世する・金銭を得る)ことや試験に自分が合格するなど程に有限性や小ささは感じられず、他人との関係は自分一人よりも複雑性があるので、虚しさを引き起こす隙も減るでしょう。 重ねて述べますが、①の用法での「意味」「目的」を考えることを否定しているのではありません。 前回も述べたように、それは②を補うこともあります。 また、②と違って普遍性や抽象性があるので、今までと違った人生へと導く可能性があり、それが素晴らしい人格を作り上げることもあるでしょう。 ただ、 人生で挫折や病気などの心理的に余裕の無いときに、宗教団体が言う「目的」「意味」に触れたら、自分の失ったと感じる「意味」「目的」とは違った用法であるかもしれないということ。 自分が「目的」を果たしても「意味」が無かったと感じたときに、宗教団体が言う「目的」「意味」へ、この場合は基本的に共通した要素があるので、飛びつかなくてもいいと言うこと。 これらを心に留めておくと、無闇に宗教団体側の設定した流れに呑まれないと思います。 それは、①の用法での「意味」「目的」について自分の側から落ち着いて考えを検討したり深めたりするためにも必要なことだと思います。 <※>戦後に拡大した新宗教団体でも、その教え(①の用法での「意味」「目的」)によって人々が救われたという以上に、その団体が提供するコミュニティーでの人間関係や活動による充実感が人々を救ったと言う見解があります。
by sleepless_night
| 2005-06-12 12:25
| 宗教
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