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下品な島の猿の話を知ってますか?


「下品な島の猿の話を知っていますか?」と僕は綿谷ノボルに向かっていった。
綿谷ノボルは興味なさそうに首を振った。「知らないね」
「どこかずっと遠くに、下品な島があるんです。名前はありません。名前をつけるほどの島でもないからです。とても下品なかたちをした下品な島です。そこには下品なかたちをした椰子の木がはえています。そしてその椰子の木は下品な匂いのする椰子の実をつけるんです。でもそここには下品な猿が住んでいて、その下品な匂いのする椰子の実を好んでたべます。そして下品な糞をするんです。その糞は地面に落ちて、下品な土壌を育て、その土壌に生えた下品な椰子の実をもっと下品にするんです。そいういう循環なんですね」
 僕はコーヒーの残りを飲んだ。
 「僕はあなたを見ていて、その下品な島の話をふと思い出したんです」

 『ねじまき鳥クロニクル 第二部予言する鳥』村上春樹著(新潮文庫)

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私がアジアを救う
私は、国際貢献の一貫(ママ)として、貧困にあえぐ、東南アジアの一角、フィリピン共和国の名も無き人々に仕事を与えるため、幻の天然バナバを追い求め、四年間の歳月をかけ、前人未到の密林を切り開き、遂に、薬餌飲料「ユニバG」を誕生させた。
日本国は、糖尿病、高血圧症ならびに肥満に苦しむ人々を救い(音声では「救う」)、そして、フィリピン共和国を物心両面で救済する。
私はここに誓う。アジア人民のため、この身が朽ち果てる迄、一命を持って、この身を捧げ尽くす。
私がアジアを絶対に救う。
これが私の国際貢献だ(音声では「だぁ」)。

 『ユニバG物語』大神源太



「一介の知事がいきなり大臣とか首相候補に指名されるなんてありえない。でも歴史を変えなくてはならない」
「僕が行ったら負けません。負けさない。負けたら分権ができない」
「あの時、今変えないと宮崎は変わらないと思った。あのときみたに、いま勝負しないと歴史は変わらない」
「三年前に知事選に出る時、高千穂で決めた。神のお告げがあった。天孫降臨の地で、ぼくに白羽の矢が立ったと勝手に思っている。くしくもこんな日、また高千穂に来たのも何かの縁だと感じている」
 7月1日 県民フォーラム 初代そのまんま東(東国原英夫)

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 会社を倒産させ、詐欺で有罪(高裁)とされた人物と、講談社襲撃に加わり、風俗店で未成年者のサービスを受け、後輩の後頭部を蹴り鞭打ち症を負わせた後に県知事として絶大な人気でマスメディアへ露出してマンゴーと地鶏販売や県庁観光化に成功し、若者への徴兵・徴農・体罰合法化を規律のためとして提言する自身は独身を理由に女性問題が囁かれ、政党代表を条件に二大国政政党への出馬を表明する程になった人物の発言を並べるのは不適切かもしれない。
 だが、彼をマスメディアで目にした時の私の感触は、大神さんを見た時のものと似ている。
 しかし、両者のとり上げられ方と、それが引き起こしている反応は正反対だと言ってもいいだろう。
 大神さんは笑いとあざけりの対象でしかなかったが、そのまんま東さんは英雄扱いだ。
 それでも、両者の「目」は似ている、と私は感じている。
 困惑する程の自己評価の高さ、自分へのゆるぎない信仰、全能感を隠そうともしない眼差し、「貢献」「救済」や「規律(教育)」「歴史」「分権」という言葉と発している自身の行動との恐ろしいほどの距離への無自覚。
 
 初代そのまんま東さんの知事としての評価に関して私はかなり不公平かもしれない。
 観光・物販を除く(これは知事の仕事ではなく芸能人の仕事。彼がいなくなれば通用しなくなるのだから、継続性や成長できる仕組みを作る行政の仕事ではない)彼の仕事を見てみると、他の県知事と比較して悪いものではないだろう。
 つまり、彼はさほど悪い知事ではないのかもしれない。
 でも、全国にいるさほど悪くない知事は二大国政政党の代表職を条件に国政へ出馬することを表明しないし、自分がいなきゃ地方分権ができないとは言わない。そんなことを表明してもマスメディアは大騒ぎしないし、好意的な取り上げ方をするとも予想されない。全国のさほど悪くない知事は自分が国を救うほどの画期的な業績を上げていないことを知っている。もし、自覚がなかったとしても
 「あんたいったい何をやったの?」といわれるのがオチだろう。
 初代そのまんま東さんは、もちろんこう答えられる。
 「3日に1回はテレビに出ました」
 県内の自殺も倒産も失業率も人口流出も3日に1回テレビ出演することの偉業を前にした県民は耳目を向けずに済む。県民は地元のローカル放送が全国へ流されるという快挙に喝采を上げ続けるだろう。

 彼は「知事」という冠(番組)で驚異的な高視聴率をたたき出した実績をひっさげて、今度は「総理」という冠(番組)を手に入れようとしている。
 「知事」という冠(番組)は通販番組で済ますことができた、宮崎の物産を初代そのまんま東として宣伝すれば日本の少なからぬ人が見てくれた。元2流芸能人がワセダで更生して地方で冠番組を持って成功したのだから、好意的に受け止められたのだろう。
 しかし、「総理」という冠をかぶったら、今度はどこへそれを流すのだろう。
 国内の民放は既に通販番組で飽和している。
 海外で初代そのまんま東は通用しない。
 
 大神源太さんのように映画でも作って世界へ公開するつもりだろうか。





追記)
山崎元さんのブログ 「王様の耳はロバの耳」 東国原さんの何がダメなのだろう で山崎さんも嫌な感じをそのまんま東さんから受けるているものの、“公のコンテクストで彼を批判しようとすると、論拠を挙げてトドメを指すことは案外簡単ではない。批判の仕方によっては、批判する側の人格の卑しさを露呈してしまいかねない。政治家としての彼を批判するなら、それなりの材料と覚悟が必要になる。”と述べている。
 過去の傷害・淫行などをもっていつまでも社会的活動から排除するのは間違っている、と私も考える。
 だが、どうしてそのお粗末な過去から「宮崎をどうにかする」や「国の未来」を憂うという時代錯誤的なまでの大文字の言葉をまき散らせる人間になったのか・なっているのかは問われるべきだし、それは公のコンテクストでも変わらない。
 自分や家族の生活を購うための仕事を云々する話ではない、公の組織の長の審査で、「わたしは変わりました」という当人の発言で済過去を済ませている国があるのだろうか。公人の言ったこと・言っていることとやったこと・やっていることの違いは常にチェックされる必要がある。
 高位の公職にある者が大幅にプライバシーを制約されることの意味を考えれば、彼の過去から見た現在を問われることは十分公のコンテクストに位置づけられると考えられる。
 
 また、政治家として機を察してより大きな貢献をするために現職を捨てることは筋があると言いうるものの“彼にはたとえば国会議員の職責を十分果たす能力(知能も人柄も)が無いと思っている。だが、こうした「心配」や「能力」への評価は、私の彼に対する評価の説明にはなっていても、他人を説得するコンテクストで主張するには盤石な根拠を持っているとは言い難い。”とも述べている。
 山崎さんが言及している、岸博幸さんの「クリエイティブ国富論 東国原知事は国会議員として適格か」 で述べてられていることで十分に“私の彼に対する評価の説明”を超えているのではないだろうか。
 それ以上、県のデータから県民の生活や経済が改善しているかどうかを判断する以上にどう知事の仕事を評価し他者を説得するのだろう。

 山崎さんはエントリで説得は難しいと言いながらそのまんま東さんへの低評価が説得的に述べられているなのは、それが狙いなのだろうけれど、確かに単なる中傷になりがちなだけに批判には留意しなければならないと思う。

 これも公式の定例会見で記者に向かって「ストーカーで警察にうったえてもいいくらいですよ」「あなたの生活態度をあらためてください」と言ってみたりテレビ番組で話し相手に「しゃべりかたがおかしい」と言ってみたり、反論されたり批判されると相手の質問・批判内容ではないことを批判することでごまかそうとする、そのまんま東さんへの山崎さんの揶揄なのだろう。
 




参照
  ○内○外日記「そのまんま東はなんかやっぱり怖いんだよ」
 モジモジ君の日記。みたいな。「そのまんま東ブームがみえなくしているもの」
 大田市長とれたて日記「東国原知事、どうしたの」
 宮崎の企業倒産:http://74.125.153.132/search?q=cache:MF9ezXmrWl4J:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/88311+%E8%B2%A0%E5%82%B5%E7%B7%8F%E9%A1%8D774%E5%84%844300%E4%B8%87%E5%86%86%E3%80%80%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E3%80%80%E7%9C%8C%E5%86%85%E3%80%80108%E4%BB%B6&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
 宮崎県20年度予算案:http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000095549.pdf平成18年からの基金の減少
 宮崎の有効求人倍率:
http://www.miyazaki.plb.go.jp/antei/antei_02.html 
 宮崎の経済成長見通し:http://www.mkk.or.jp/2009_4/0904newsrelease.pdf
 宮崎の人口:
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/honbu/toukei/jinko-hayawakari/dotai_sokatsu.html#21 
テレビ出演回数: http://74.125.153.132/search?q=cache:Sq1cHe_AtBAJ:www.asahi.com/politics/update/0701/SEB200906300040.html+%E6%9D%B1%E5%9B%BD%E5%8E%9F%E3%80%80%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E5%87%BA%E6%BC%94%E3%80%80%E3%80%80%E5%9B%9E%E6%95%B0&cd=9&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
 都道府県別自殺率:http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/everymonth/pdf/kenbetsu.pdf
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by sleepless_night | 2009-07-06 22:31 | メディア
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