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女子アナと飲酒ではなく、セックスだったら?

 今回、NEWSのメンバーが女性アナウンサー(菊間さん)としたのが、飲酒ではなく、セックスだったら、どうだったのだろう?
 そんなことを考える人はあまりいないかもしれません。
 でも、この仮定を考えることはあながち変態的でもないと思います。
 特に、メンバーと菊間さんへの処分の重軽の意見の二分の意味は、セックスと比較することでよく現れると思います。

 今回、NEWSのメンバーと菊間さんがテレビ出演の取り消しや、謹慎、減給などの処分を受けるのは、このメンバーが未成年だったから、つまり、未成年飲酒禁止法に反し(メンバーは一条一項に、菊間さんは一条二項に反します)たからだと考えてよいでしょう。
 
 しかし、この明らかな違法行為について、賛否が分かれることを支えるのはメンバーが18歳だからだと考えられます
 つまり、高校卒業して就職したり、大学入学したりする年齢、そして、その新入社員歓迎会や新入生歓迎会で当然のように飲酒が容認されていることは大多数が認識し、かつ、自分達も経験していることです。
 法規範と社会規範のズレに18歳という年齢が嵌り、この賛否の二分を支えているということです。
 厳罰賛成の立場なら、法規範を重視し、反対の立場なら社会規範を重視すれば、どちらも同程度の説得力をもつことができます。
 しかし、これは飲酒という一つの行為についての法・社会規範のみを持ち出して賛否を争っているだけです。

 そこで、最初の話をですが、飲酒ではなくセックスだったらどうだったのか
 “お酒は二十歳から”のようなキャッチコピーがないので、明確に意識している人は多くないでしょうが、18歳(と)がセックスすることは合法です。
 刑法では176条(強制わいせつ)と177条(強姦)で“十三歳未満”の男女(強姦は女性のみ)に対しては暴行・脅迫を用いてなくとも、わいせつ・姦淫を処罰対象としているので、“十三歳以上”ならば合意の成立を認めていると考えられます。つまり、刑法では十三歳が性交の合意有効無効(性交の適法違法)のラインとなります。
 しかし、勿論、十三歳以上でも性交をすれば犯罪になります。
 なぜらば、青少年保護育成条例があるからです。
 この条例は、確認をしていないので分かりませんが、殆どの県にあるはずです。当然、今回の事件が起きた宮城県にもあります。
 この条例、宮城県青少年健全育成条例30条では、青少年(14条:青少年=6歳以上18歳未満)との性行為を禁じています。又、そのほかの都道府県でも同様で、18歳未満との性行為は禁止されています。
 刑事処罰のラインは、以上から18歳だと言うことになります。
 では、民事ではどうかというと、民法731条では女性は16歳以上、男性は18歳以上と婚姻可能年齢を定めています。
 つまり、民法は性交(結婚許可に性交許可は含まれる)を女性の場合16歳以上と考えていることになります。
 ちなみに、これでは青少年保護意育成条例に反するのではないか?と考える人もいるかもしれませんが、条例では婚姻した場合を除くとしています(婚姻による青年擬制:結婚するくらいの精神的成長があるのだから、成人と同様に法律上は扱う制度)。
 
 長々と細かい話をしましたが、今回、NEWSのメンバーと菊間さんがしたのが、飲酒ではなくセックスなら法律上は問題なかったのですし、そうするとそれぞれの所属する会社としても罰する根拠は基本的にはないことになるはずです。 ただの痴話話、芸能ネタで、リポーターとの低劣なやり取りをするだけで、処罰という問題にはなる可能性は低かったと考えられます。(但し、深夜に呼び出していたようなので、この行為も条例に反します。条例35条)

 さて、セックスならよかったという話をするために、以上を述べたわけではありません。

 まず、ざっと読んでみると、法律が(特に、セックスに関しては)バラバラだということに気づくと思います。
 そして、このバラバラなセックスについての法律の規定と飲酒の規定を考えてみると、さらにおかしなことに気づくはずです
 法律には、それぞれ目的があります。
 例えば、未成年飲酒禁止法なら、体(特に脳)が発育段階にあり、かつ、判断能力が未熟な未成年を飲酒によって精神的・肉体的に害を受けることから守ることです。
 刑法でしたら、国民の生命身体財産を侵害から守ることです。
 上述した、セックスに関する刑法に当てはめますと、十三歳以上の男女の身体や性的自由を守ることが、この条文の目的になります。
 青少年健全育成条例でしたら、その名の通り、県内の青少年の健全な育成のために、青少年を有害な行為・場所から保護することです。
 民法は、人々の生活の中でのトラブルを防いだり、トラブルを解決するための共通のルールですから、民法731条が婚姻年齢を制限したのは、制限年齢以下では、婚姻について判断する力がないと考え、その様な判断力不足からする結婚生活をすることの損害(結婚生活を維持するための社会的な能力の欠如からの困窮、子供の育成の困難、育成環境の不全)を防止することが目的だと考えられます。

 気が付きましたか?
 未成年飲酒禁止法が守るのは、飲酒する本人です。
 対して、刑法・育成条例・民法の各法の性交に関する条文が守るものは、セックスする本人のみならず、セックスの結果生まれる可能性のある子供もです。
 本人を守るだけの条例が、20歳を合法違法のラインにしているのに、他者(生まれる可能性のある子供)をも守る法律・条令の場合は、18歳を合法違法のラインにしてあるのです
 
 セックスに関しての法律の混乱もさることながら、この理不尽な差異を意識ていしる人はどれくらいいるでしょう。
 十八歳ならセックスという、新しい生命、自己決定のできない他者を生み出す可能性のある行為をすることが法律で認められている、法律で保護される関係を作ることができる自由があるのに、飲酒という、結局は自分の体が不健康になる(最悪、死亡する)だけ(※)の行為は十八歳では違法になってしまうのです。
 これは、明らかにバランスが悪く、理不尽な状態です。
 このようにセックスの法規範と比較して考えると、今回が飲酒をしたのではなく、セックスをしたと考えたとき、それが非難に値しない(違法ではない)と判断するなら、飲酒も非難をすること(違法として処罰する)はできなくなるはずです。(※1)
  
 このように考えてみると、今回の件、18歳と飲酒すること、それを法的に社会的に処罰することで何がしたいのか、理解しがたいものです。
 厳罰賛成側の論拠だった法規範を中心に考えても処罰することが不合理なものだと考えられてしまうのです。 

 
 さて、「でも、理不尽でも法律は法律。アナウンサーや人気アイドルという社会的な影響力のある人間には、一般人以上の倫理が求められる。だから、一般には飲酒はしているけど、彼ら・彼女らは許されず、厳しい制裁を受けるべきだ。」と考える人もいるかもしれません。
 これに関しては、以前述べたように、現在、アナウンサーは倫理性を求められていません。話す機械として存在していますので、人格は関係なくなっています。(以前の記事『女子アナものAVではなく、女子アナがAVに出る日』) ですから、菊間さんは、この件でテレビ出演を降板させられるべき理由は考えられません(期待が無いので、それを失うこともない)。
 だいたい、毎日必ずテレビにでている、自己責任と合唱した国会議員、某政党、責任や倫理から最も遠い人々が映る中で、彼ら・彼女らに、飲酒をしたことで倫理を問うことの重要性がどこにあるのか、私には理解できません。
 最近も飲酒した議員が議場にいたこはどうなったのでしょうね。
 公安委員長も県警も、十八歳、繰り返しますがセックスして子供を作ることが許される年齢の人間、新しい生命の責任をもてるとされる年齢の人間が、せいぜい自分一人が死ぬくらいでしかない飲酒や、公園で騒いだことを騒ぎ立てて何をしたいのでしょう。

 こんな“事件”で騒いで、法律を振りかざし、処分をしていたら、これから有名人は自動車を制限速度で走らせなくてはなりませんね
 自動車は以前述べたように、“許された危険”です。殺人の道具となる可能性を大きく含んだものです。だから、免許という、原則禁止(免許を持たない人は運転を禁止されている)の制度をもちます。
 セックスと同様に、自分の生命身体だけではなく、他者の生命身体への加害・影響を及ぼすものです。法律上、18歳から許される点でも同じです。多数が未成年飲酒禁止法の年齢制限を守っていないと同様に、多数が法廷速度を守っていません。
 多数が法規範を守っておらず、社会規範的には許容範囲の行為でも、有名人であることを理由に処罰されるべきとするなら、自動車の制限速度も守らない有名人を処罰しなくてはならなくなります。
 本当にどうでもいいことで、それが本当にどうでもいいと分かっているはずなのに、ベタに法律や倫理(法律も倫理も考えての上ではなく、法律に書いてあること、それに従うことを倫理と勘違いしている)を持ち出して叩こうとするのは何故でしょうね。
 

※)“だけ”としたのは、アルコールで死ぬことを軽視しているのではなく、新しい生命、自分以外の他者を、その他者の意思抜きに誕生させることと比較してのことです。
 つまり、自己決定が飲酒ではあてはまりますが、セックスの結果の子供には子供自身の自己決定が保障されていません。
 自分の決定で自分が被害を受けることには合理性がありますが、自分が決定権のないことで多大な影響(この世への誕生)を受ける子供にとってはそれ自体がある意味で不合理です。
 ですので、“だけ”と自己決定のあるアルコール摂取について強調しました。
※1)これは、あくまでも現行法を見渡してみたときに導かれる論理の帰結であって、性交を何歳から許可されるべきかという倫理学からの視点から導かれるものではありません。このことについて、私見を導くには、恋愛・結婚の歴史を通覧した上で、男女(若しくは、同性)間の関係性の倫理を考えなくてはなりません。
 
 

 
 
 
 

 




 
 
by sleepless_night | 2005-07-20 21:49 | メディア
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